今月のコラム

2022/6/1

毎年、6月は『食育月間』!
改めて考える、「食育」ってなんだろう? 自宅で楽しく学べる食習慣のすすめ

よく耳にする「食育」という言葉。特に6月は農林水産省により食育月間と定められており、国や地域、学校などで食育の推進を強化しています。食育には、「好き嫌いをなくしてなんでも食べ、健康な体を作る」「栄養を理解して、体への影響を知る」「食べものの育った過程を知り、食べられることに感謝する」など、さまざまな目的があります。でもどれも「がんばろう」と思うと時間もかかるし負担も増えるばかり…! そこで今回は親子で簡単に、生活の中で一緒に楽しめる食育体験について考えてみましょう。キッズ食育トレーナーの古田あゆみ先生に、簡単なポイントを教えてもらったので、ご参考にしてみてくださいね!

古田あゆみ先生

キッズ食育トレーナー 小児理学療法士
千葉県船橋市で親子向けに食育スクール「青空キッチン」や、野菜づくりが体験できる「わらうこども菜園教室」を主宰。ほかに、成長相談や離乳食相談など多方面で活動中。

もくじ

「食育」ってなんだろう? 家庭でできるちょっとした取り組み

「食育」とは、簡単にいうと、食に対する知識を深めて、正しい食習慣を身に付ける教育のこと。「難しそう」と思うかもしれませんが、まずは生活の中で「食べることを楽しむ」ことも、食育のひとつ。今日からできる簡単な取組も紹介しますので、ぜひ、ちょこっと取り組めることからチャレンジしてみてくださいね。

◆古田あゆみ先生より

「食育をがんばらなきゃ」と思うご家庭も多いかもしれませんが、実はみなさん、既に日常の中で食育をされているんですよ。例えば、食べる前に「いただきます」ということだけでも食育です。また、食べながら「おいしいね」とか「どのおかずを食べる?」とか、食に関する話をするのも、ほとんどの人がやっていますよね。だから、「私は十分やっている」と自信を持って、気張らず、とにかく家族で楽しい食卓を囲んでくださいね。

今の「旬の野菜」ってな~んだ!?

現代では年間を通してスーパーには多くの野菜が並んでいますが、それぞれの野菜には「旬」があります。旬の時期に食べると一番おいしいし、栄養があって体にもいい…、そんなことを、子どもたちにはさりげなく伝えていきたいですよね。例えば、夏においしい野菜の旬カレンダーを見て、親子でクイズにして楽しんでみては? 旬カレンダーの野菜を使ったレシピも、下に掲載しているのでぜひ家族でチャレンジしてみてください。

※参考文献
「野菜まるごと大図鑑-知る!食べる!育てる!」(主婦の友社刊)
「旬を楽しむ梅しごと 梅干しから梅酒、毎日の梅レシピまで」山田奈美(家の光協会刊)
※地域によって旬の時期は変わることがあります。

◆古田あゆみ先生より

旬のものが体にいいのはもちろんですが、子どもたちの興味の扉を開けることにもつながっていきます。例えば野菜の旬を知ると、「この野菜がどうしてこの地方で、この季節にたくさん採れるのか」といった地理的な知的好奇心が湧いてくることも。そこから日本の地形にも興味が湧くなど、食をきっかけに幅広い興味が広がっていきます。

私たちが「食べている」ものに
出会いにいこう

野菜がどんな風にできるのか、並べられた魚やお肉がもともとどんな形で、どういう風に生きているのかといった、「実物」を知らないお子さんもいるかもしれません。ぜひ休日などを利用して、ご家族で実物を見に行ってみてください。触ったり、においを嗅いだり五感で感じることで、「食べる」への思いが変わってくるはずです。

「実物」に出会える場所

■道の駅や直売所で土がついたままの野菜を見る■牧場で生き物たちと触れ合う■家庭菜園で野菜を育ててみる■スーパーの鮮魚売り場に行く■種売り場で、野菜の種を見て比べてみる

◆古田あゆみ先生より

子どもにとって実感を伴う体験はとても大切なので、ぜひ実物を見に行ってみてください。触ったり、見たり、においをかいだりなどの五感を使った実感のある体験と知識が、豊かな人間性を育んでいきます。子どもはそんな体験をすると、「これは何?」「なんで?」など質問をしてきますが、おうちの人も必ず正解を答えなきゃいけないわけではありません。「なんだろうねぇ、おもしろいね」など、感じたことを率直に話して、一緒に考えるきっかけにしてみてくださいね。

年齢に合わせたレシピで、親子でレッツクッキング

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一緒に料理をする体験も食育につながるので、家族でコミュニケーションを取りながらお料理ができるといいですね。そこで、旬の野菜を使ったレシピを、古田先生に聞いてみました! 子どもの年齢に合った調理法別にご紹介します。

※成長スピードや調理経験などによって個人ができることは違うので、年齢はあくまで目安です。 ※「うまくいかない」という場合は、テーブルの高さや箸の長さなど道具が合っていない場合もあるので、確認してください。

未就学児

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<ちぎって簡単グリーンサラダ>

レタスとアスパラガスを手でちぎる。生ではかたいアスパラガスは、ゆでるかレンジでチンをしてやわらかくする。手でちぎった豆腐と一緒にレタスとアスパラガスを混ぜ、お好みのドレッシングをかけて食べる。

◆古田先生より

この年齢は、手の感覚が未熟な時期。だからこそ手指系に刺激を与えることが大事なので、道具を使うよりも直接触ることを大切にしたレシピです。

小学校低学年

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<夏に最高、甘~い梅シロップ>

梅を水につけてアクを取り、丁寧に拭き、竹串でヘタをとる。煮沸消毒したビンに梅を入れ、同量の氷砂糖を入れる。発酵を促すために、梅の重量に対して1割程度の酢をまわしいれる。10日ほど毎日ビンを回転させて液体がまんべんなくかかるようにする。完成したら、水やソーダで割って飲んだり、ゼリーにして食べる。

※梅はまれにアレルギー反応を引き起こすことがあるので、初めて触るときはご注意を。

◆古田先生より

道具を使いたくなる年齢なので、手触りだけではなく竹串で簡単に作業ができる梅が最適です。梅の季節は短いので、「夏が来たんだなぁ」と季節を感じる手仕事になります。

小学校中学年

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<包丁を使ってトマたま味噌汁>

子ども用包丁を使って、トマトを切る。つぶれてもいいので好きなように切っていく。豆腐も同じく切り、味噌汁にする。トマトと豆腐に火が通ったら、鍋の上で卵を割入れ、乾燥わかめも入れてトマたま味噌汁に。

◆古田先生より

力がまだ弱い子もいるので、子ども用包丁で形崩れしてもOKの豆腐やトマトを切るのがいいでしょう。手指が器用に動かせるようになる時期なので、卵を割る動作もおすすめです。

小学校高学年

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<アレンジも自由に♪ジャーマンポテト>

包丁またはピーラーでじゃがいもの皮をむき、包丁で好きな大きさに切る。大きすぎる場合は茹でるかレンジで柔らかくする。ベーコンを切って、バターでじゃがいもを一緒に炒める。塩コショウで整えて完成。チーズや青のりを加えたり、カレー粉を入れてカレー味にしたりなどのアレンジもお好みで。

◆古田先生より

火を使えるようになる年齢です。ジャガイモなどのちょっと固いものにもチャレンジを。また、食への興味も大きくなり、自分好みのアレンジを思いつくようになり、より料理が楽しめます。


全体を通して
古田先生からメッセージ

子どもが料理をしたら、ぜひ、「これをあなたが作ったのね! おいしい!」と、そのがんばりをたくさんほめてあげてください。子どもの料理を手助けするのは家族にとって負担が大きい場合もあると思いますが、大げさにでもほめて子どもが笑顔になることで、子どもも家族も「やってよかったな」と思える体験になるはずです。 そしてとにかく、「食べる」ことを楽しんでください。笑顔の食卓は笑顔の人生を作ります。「食育! 食育!」と躍起にならず、できることから始めて、ぜひ家族で楽しい時間を共有してくださいね。

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